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『標準日本語讀本』シリーズは長沼スクール創立者・長沼直兄(ながぬま なおえ)の代表的な著作であり、入門から超上級までの全七巻からなる日本語教科書である。初級で基本文型を学習後、中級以降は、文学作品・落語・日本事情・平安時代や江戸時代の文化・日本政府の仕組みなどもテーマとして取り上げられており、日本について一通りのことが学べる内容になっている。
長沼直兄は英国人言語学者ハロルド・パーマー(文部省英語教授研究所所長1923年~1936年)のすすめで1923年に米国大使館の日本語教官に就任した。その後約18年間にわたり米国陸海軍の将校に日本語を教え、このことが『標準日本語讀本』を手がける契機となった。
当時大使館では小学生用の国語の教科書が教材として採用されていた。大人が外国語として日本語を学ぶための教材としては不適当と考えた長沼直兄は、自作テキストを使って授業を行うようになった。この教材は構文・語彙・漢字を総合したもので、またパーマーが提唱する教授法「オーラル・メソッド」を取り入れていた。授業で試用と改良を繰り返すなかでテキストの完成度は高まり、大使館で高く評価されるにいたった。このテキストをもとに作成したのが『標準日本語讀本』(全七巻)である。1931年に『標準日本語讀本巻一』を自費出版し、その後約3年間をかけて『標準日本語讀本巻七』まで出版した。頒布は米国大使館内に限られていたが、長沼直兄の名前から「ナガヌマ・リーダー」と呼ばれ、将校らに親しまれた。
1948年、東京日本語学校の開校と同年にはこの『標準日本語讀本』を改訂した『改訂標準日本語読本巻一~八』が完成しているが、これも非売品であった。初めて一般向けに出版されたのは、1950年のことである。附属教材も完備した同シリーズ全八巻が長風社より出版された。その後1964年から1967年にかけて、『改訂標準日本語読本巻一~五』を改訂した『再訂標準日本語読本巻一~五』(長風社)も出版している。
なお、1997年に、学校法人長沼スクールの前身である財団法人言語文化研究所より、『標準日本語讀本』全七巻の復刻版が出版されている。