ナガヌマ・メソッド

創立者 長沼直兄

一般財団法人

語学教育研究所 所蔵写真

英国人言語学者

ハロルド・パーマー

創立者である長沼直兄(ながぬま なおえ)は、英国人言語学者ハロルド・パーマーが提唱した教授法「オーラル・メソッド」の影響を受け、これを日本語教育に応用して「問答法」を開発しました。これがいわゆる「ナガヌマ・メソッド」です。

ナガヌマ・メソッドの言語学習観

ナガヌマ・メソッドは音声言語を重視し、母語を習得するプロセスを踏みます。

人は誰でもこのようなプロセスを経て母語を習得していきますが、
外国語である日本語を習得するときにもそのプロセスを重視して教えていきます。

ナガヌマ・メソッドの特徴

教室では日本語だけ使用し、「修正直説法」で日本語を身に付けていきます。
初級クラスでは、授業中、基本的に教科書は使用しません。

授業中は、以下の4つの質問を順序よく、あるいはミックスして、
「音声によるキャッチボール」のようにテンポよく学生に問いかけ、答えさせます。
いわゆる「リピート」は行いません。

授業の進め方

一日4コマで授業を行い、3コマ目の授業に新しい文型、新しい言葉を導入しています。
学生は自宅に帰ってそれを復習して、翌日の1コマ目と2コマ目に練習をします。
1時間で導入したことをその2倍の時間をかけて練習をするということにも特徴があります。

  1. 導入
    4つの質問

    まずは教師がたくさん聞かせ、4つの質問で「聞かせる→言わせる→聞かせる→言わせる」ということで言葉を覚えていきます。

    既習語彙で新出文型を導入

    新しい文型を導入する時には、習った言葉だけを使って教えます。そうすることで学生は、負担なく新しい文型を身に付けることができます。

  2. 練習①
    耳ならし、口ならし

    「聞かせる」→「言わせる」の反復練習をしながら、間違った発音や、言い間違いを矯正し、正しい言い方を身に付けていきます。そしてこれも単なる繰り返しではなくて、意味のあるやり取りにするように心がけます。

  3. 練習②
    まとまりのある「やりとり」

    実際のコミュニケーションに近いやりとりを教室内で再現する時間です。ロールプレイや、インフォメーションギャップのあるゲームなどを行い、出来るだけ実際のコミュニケーションに近いものにするために学生を動かしたり、いろいろなものを提示したりします。最終的には、学習者自身のトピックで話せるように導きます。

問答法の留意点

  • ①よく聞かせる
  • ②一問一答ではない問答にする
    話題を広げて展開することによって、実際のコミュニケーションに近づけます。
  • ③他の学習者も巻き込んでいく
    教師が質問して学生が答えますが、その学生だけが集中しているのではなく、他の学生も一緒に集中できるように周りを巻き込んでいきます。
  • ④テンポよく、飽きさせない
    授業時間の間、集中できるように4つの質問をキャッチボールのようにします。
  • ⑤学習者自身のトピックに移行する
    練習で口ならしをしながら、最終的には学習者自身のトピックで話せるように導きます。

教師の力

学生が練習するのを手助けするのが教師であるというスタンスで指導に当たります。教科書を広げて、それを読みながら順番に進めていくという授業ではありませんから、この文型、この言葉を教えるには、どういった場面、どういった順序が適切かということを教師が自ら考えて準備をしておく必要があります。

また、周到な準備があれば、どんな答えが返ってきた時にもそれを上手く利用して、応用力をつけて適切に臨機応変に話を展開していくことができます。このように実際のコミュニケーションに近い授業を進められる教師が求められています。

「周到な準備」で「大胆な授業」を目指します。

周到に準備されて、とぎれることのないリズムのある会話練習、中級・上級においても学習者の発言を丁寧に受け止めながら、次々とさらなる発話を促していくという、学習者主体の授業を行います。